名場面に名言あり。サッカー界で語り継がれる記憶に残る言葉の数々。「あの監督の、あの選手の、あの場面」をセレクトし、振り返ります。

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「サッカーは表現力の芸術であり続けないといけない」

19年10月24日。元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏(70)が日本で行った講演会で、今後のサッカー界について語った際の一言だ。

ベンゲル氏は現代サッカーについて「テクニックとフィジカルはトップレベルに達している」と口にし、「忘れてはいけないのはクリエーティビティーではないか」と訴えた。

創造性あふれるプレーをする選手が解雇されたり、メンバー外となる姿を何度も目にしてきたといい「フィジカルがあまりにも強くなって、クリエーティブが殺されるのは非常に残念です」。そして、冒頭の言葉を述べた。

15年ぶりの来日となった講演会には、興味深い話がいくつもあった。同席した元日本代表監督の岡田武史氏からアーセナルの監督時代について問われた際の返答には、トップアスリートを成功に導く指揮官としてのポリシーが垣間見えた。 「トップレベルのアスリートたちにモチベーションを与えることが自分たちの仕事ではなく、各自が持っている目標に向かって、どういう風にアプローチすれば、その選手の理想像に近づけるのかを助けるだけ」

トップ選手は自身の思い描く目標と現時点での差を把握し、どう取り組めばいいかを理解して行動することができると語り「選手が内面でどうなりたいと思っているかを、理解することが大事だと思います」と説いた。

95年から約2年間は名古屋の指揮官としてJリーグも経験したベンゲル氏。昨年には日本での活動において吉本興業とマネジメント契約も結んでおり、今後の日本サッカー界との関わりにも注目していきたい。