例えば先週末の横浜M対FC東京戦の観客は、4769人だった。日産スタジアムの収容人員は7,2081人だから、50%だと3万6040人になる。当然、少ない方の5000人以下となったわけだ。それが8月からは、3万人の入場が可能になる。
ただ、村井満チェアマンは16日の会見で、「上限が50%であって、5000人を超えて(最大)50%にならなければいけないものではない」と警告しつつ、「上限通りでチケッティングをするか、場合によっては上限より下でチケッティングするか。クラブの置かれた(地域の)感染状況など様々な要因を勘案してクラブが個々に決める」と、地域の事情やスタジアムの規模と形状などを考慮して、個別の対応をクラブに求めた。
それも当然だろう。“超”が取れて「厳戒態勢」になっても、ファン・サポーターには以下の行為が禁止されていることに変わりはない。
1)応援を扇動する。
2)歌を歌うなど声を出しての応援、指笛。
3)手拍子。
4)タオルマフラー、大旗を含むフラッグなどを“振る”もしくは“回す”。
5)トラメガ(トランジスタメガホンの略。増幅器内蔵で電源を使う。ハンドマイクとも呼ばれる)を含むメガホンの使用。
6)太鼓等の鳴り物。
7)ハイタッチ、肩組み。
8)ビッグフラッグ(ただし観客のいない席に掲出する場合は容認される。横断幕の掲出は容認)。
さらに、「ビジター席は設置する」とガイドラインに記載されているものの、チケット販売に関しても
1)1試合毎の販売。
2)販売期間は1週間程度。
3)一般発売は有りとする。
と、「超戒厳態勢時」との違いは3の「一般発売有無はクラブにて決定する」が「有りとする」に変わっただけで、チケットを入手するための制限に変わりはない。そして実際のところ、「1試合毎の販売で、1週間程度」となると、購入者もかなり限られるだろう。
FC東京や浦和、大宮などはシーズンチケット購入者に対して全額払い戻しか、寄付金にしてもらい、税法上の優遇を受けられる措置などをコロナ対策として打ち出した。
知人の大宮ファンは、「シーズンチケット代は強化費に充ててもらえばと寄付しました。代わりにネットでシーズンチケットを持っているファンに割り当てられた枠に申し込んで購入しました」と11日の東京V戦のチケットの購入方法を教えてくれた。もちろんチケットはスマホに送信されてくるペーパーレスだ。
これがファン・サポーターの不公平感をなくすと同時に、チームにとっても諸々のリスクを最大限に避けた販売方法だと思う。付け加えるなら、NACK5スタジアムはそれほど大きくはないため、普段はビジター用のバックスタンドもホームのファン・サポーター用に開放した。これなどは村井チェアマンの言う、クラブ毎に密を避ける方法と言える。
そこで8月1日からは「ビジター席は設置」し、「一般発売」も開始されるが、いったいどのような方法で販売されるのか気になるところだ。最も確実なのはチームのホームページからの申し込みだろうが、問題はホーム・チームがビジター用に何席提供するかだ。
11日の大宮対東京V戦は、NACK5スタジアムのゴール裏1階はサポーターの写真などを置き観客の間隔をとり、2階にも観客を入れていた。12日の横浜M対FC東京戦は逆にバックスタンド1階に観客を入れ、2階と3階は使用していなかった。
だいたいのクラブにおいて、入場料収入は、それに伴う飲食や物販の販売なども合わせてスポンサー料に次ぐ収入源だ。なるべく多くの観客に入ってもらいたいというのが本音だろう。ところがスタンドを開放することで観客を入れられる代わりに、警備員の確保と試合後の清掃のための人件費などがかかる。この損益分岐点を各クラブはどのように見極めるのか。
販売期間が1週間で1試合毎となると、事前に対戦相手に確認する余裕もないだろう。ここらあたり、過去の対戦からアウェーのサポーターがどのくらいになるか判断するしかない。東京都など一部の地域を除いて沈静化しつつあるコロナの感染状況だが、まだまだ手探りで進まなければならない状況に変わりはない。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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