専業主婦の女性に対して「なぜ働かないの?」と聞く人は多くないかもしれない。しかし、家事や育児に懸命に励む男性に対してはどうだろうか。連載第6弾は、専業主夫という生き方を始めたKさんが、社会と自分の間によこたわる大きな考え方のギャップと自身のキャリアプランについて語る。
根強い固定観念。
私には2歳の息子がいる。妻が仕事に復帰するのを機に、私は半年前に仕事を辞めて専業主夫となった。正直、仕事よりも専業主夫のほうがよほど大変だ。コーヒーを飲みたいときに飲む余裕さえないけれど、毎日がとても充実していて、このライフスタイルを楽しみ、幸せを実感している。 だから、個人的には専業主夫であることが気に入っている。日々成長していく子どもと存分に向き合う時間を持つことができるし、仕事から疲れて帰ってくる家族を温かい食事で迎え、家を切り盛りすることには、何物にも代えがたい歓びがある。それが、私が専業主夫になった理由だ。 そのように充実した日々を送る私に、必ず聞かれる質問がある。 「なぜ働かないの?」 専業主婦にも同じことを聞くのだろうか。それ以外にも、この3ヵ月間、「働けばもっと稼げるのにもったいない」「退社せずに育休をとって、2~3年後に職場復帰すれば、イクメンアピールができるし先進的でセクシーに見てもらえるかも」など、相手に悪気はないのだろうが、失礼とも取れる言葉を度々投げかけられてきた。
キャリアを捨てたわけじゃない。
こうした言葉に見え隠れする「働いて稼いでいない=何もしていない」という偏見に、いつも違和感を覚える。その度に、何もしていないわけがないだろう、と叫びたくなる。 私の一日は朝6時の起床に始まり、朝食をつくり、外遊びの好きな息子を三輪バギーに乗せて近くの公園までランニングする。帰宅後は昼食を用意し、息子が昼寝する間に掃除や洗濯、夕飯の準備を終わらせる。夕方は、息子を連れて公園や図書館に行き、帰ったら夕食を食べさせお風呂に入れ、寝かしつけ……といった具合。一日がびっしりタスクで埋め尽くされている。育児には大変な体力が要るとわかってからは、むしろ力の強い男性こそ育児に向いているのではないかとさえ思うようになった。 専業主婦 / 主夫は料理や保育、掃除などのスキルに加えて、財務や安全衛生の管理能力はもちろん、柔軟性や忍耐力までマルチな能力が鍛えられる立派な「キャリア」だ。これまで7年間企業で働いてきたので、今後7年は専業主夫としてスキルを磨き、満を持して会社に復帰するつもりだ。 ところが、どうやら社会の大半は私の考えとは違うようだ。それを思い知ったのが、先日不動産を購入するにあたり妻名義で書類を作成したときのこと。妻は国家公務員でローンを組むのに申し分ない就労状況であるにもかかわらず、不動産会社からも銀行からも、私が「なぜ仕事をしないのか」とか、「実際には専業主夫ではなくフリーランスで働いてるのではないか」と尋ねられ、その度に審査が滞った。根深いアンコンシャスバイアスを感じた経験だった。 こうした「事件」に度々見舞われるものの、ともあれ私自身は専業主夫を謳歌し、豊かな日々を過ごしている。専業主夫という選択がもっと広く認知され、多様な家族運営のあり方が認められていくことを説に願う。何より私と同じ選択をする男性が増え、朝の公園を一緒に走ってくれる仲間がいてくれたら最高だ!
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July 09, 2020 at 06:34PM
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