3月22日、成田空港に向かいながら、私の胸中は複雑だった。
4月1日付でワシントンに赴任することが決まっていた。ただ、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、不安はあった。
渡航を延期するという選択肢もあったが、米国の状況はこれからさらに悪くなるだろうから、いま向かわないと、いつ入国できるか見通しが立たなくなる。何より、新型コロナウイルスの感染が広がるアメリカで何が起きるか、記者として読者に伝えたい、という思いがあった。
この時点で、日本から米国、または米国から日本への渡航に制限はなかった。ところが、飛行機に乗っている間に、日米双方とも、入国者に到着してから2週間の自宅待機を求めることを決めた。
入国審査は肩すかし
厳戒態勢かと想像したが、入国審査は思いのほか、あっさりしていた。事前のビザ申請や成田空港でチェックインしたときには、最近の中国への渡航歴を聞かれたが、それもなし。発熱や健康状態についての質問もなく、自宅待機についての説明も一切なかった。
入国審査官は、私のパスポートのビザを見て話しかけてきた。
「ジャーナリストですか。取材することがたくさんありますね」
「そうですね。ちょっと不安もありますが」
「まったく、こんなことは前代未聞ですよ」
こんなやりとりを交わした程度で、すんなりと入国できた。
2週間の自宅待機といっても、自宅はまだない。予約したワシントン郊外のホテルにレンタカーで向かい、チェックインした。
事前に聞いていたとおり、街中は車も人影もほとんどなく、ゴーストタウンのようだ。レストランは閉店かテイクアウトのみ。とはいえ、まずは入国できた。ネットでじっくり家探しをするのも悪くないと、楽観的に考えていた。
「廊下に患者を寝かせてるって」
だが、見えないウイルスの影は、思った以上の速さで忍び寄ってきた。私の元妻と子どもたちが住むニューヨークが、世界で最も深刻な感染の中心地となってしまったのだ。本人たちの了解を得て、3月末からの出来事を書きたい。
到着の翌日、大学生の長女にテ…
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April 23, 2020 at 09:53AM
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私のNYの家族、全員感染したかも 2週間で消えた日常 [新型コロナウイルス] - 朝日新聞デジタル
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