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鳴り響く「外出禁止」の警報音、守らなければ逮捕。【私の街では今〜アブダビ編】 - VOGUE JAPAN

リラックスした生活が3月に入って一変。

アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビ首長国に住みはじめ1年が経とうとしています。コスモポリタン的な雰囲気の同国では、人々も優しく思いやりがあり、インフラもよく整備されているため、45度を超える夏の暑さを除けば快適な暮らしを送っていました。しかし、3月に入り、状況は一変しました。

アジア地域において新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が自明になった2月、他の中東諸国を旅行していた際に「コロナコロナ」と言われるなど、悲しい目に遭ったのですが、様々な国籍の人が住むUAEでは、差別的発言が禁止されていることもあり、いやな思いもせず、また、新型コロナウイルスの影響を感じることもなく、リラックスした生活が続いていました。

しかし、3月に入ってUAEでも雲行きが怪しくなってきました。まず手始めに学校の「春休み前倒し」が発表され、リモートワークの議論が始まりました。一方、国内の様々な施設はまだ営業しており、私も近くの城塞兼博物館でUAE人によるアラビックコーヒーの実演と味見を楽しんでいました。当日同じ場所でUAE人による伝統舞踊の披露も予定されていたものの、自粛するようにお達しがあったようです。ただ、どうしても踊りたい人達がいたようで、城塞外で真っ暗の中、月あかりだけを頼りに静かに歌いながら、皆で輪になって踊っていました。夜、城塞外で月明りに照らされた真白な民族衣装カンドゥーラを着た男たちがゆらゆら躍る姿は中々お目にかかれるものではありません。街中ではありますが、向こうに砂漠を見た気がしました。

ビザ発給停止、そしてフライトもストップ。

現在の街の風景。涼しく過ごしやすい季節だが、外を出歩く人は激減した。

3月半ば、ついに観光施設、ビーチや映画館、公園が閉鎖、レストランやカフェも営業を禁止されました。3月下旬には、ビザ発給停止措置にはじまり、航空機発着が停止され、新型コロナウイルス感染拡大措置として怒涛の如くさまざまな政策が発表されました。これにより、UAEに向かっていた友人2人が搭乗拒否の憂き目にあい、アブダビで会う予定だった旧友も急いで日本に帰国しました。そして、この移動の制限は私自身にも影響を与えたのです。

3月半ばに予定されていたカザフスタン人の友人の結婚式に参加するため渡航を計画していましたが、直前に同国で非常事態宣言が発出され、結婚式も中止になりました。また春に予定していた英国への渡航、日本への一時帰国もひとまず据え置きです。福岡の実家から両親が花々が咲き乱れる庭の様子を写真で送ってくれるので、それで2020年日本の春を感じて満足することにしました。ちなみに同国ではフェイスブックやLINEでの通話やビデオ通話は禁止されているため、家族とは主にメッセージでやり取りしています。

毎晩鳴り響く「外出禁止」の警報音。

パンデミックが起こる前の昨年12月末、金輪日食を見にアブダビ首長国内陸のリワ砂漠にて。

海外で暮らし始めて今年で6年目。この間、国を跨いでさまざまな土地を開拓し、友人とハグで挨拶を交わしたり、道端の露天で適当に買ったサンドイッチを片手に車で国境を越えたり、所謂「国境」に左右されない、人との身体的接触にも制限のない生活が、私の人生の前提条件でした。普段の暮らしの中でも、友達と砂漠を駆けまわったり、マングローブでカヤックを楽しんだり、カフェで店員と何気ない会話を交わしたりと、私が生活に取り込んでいた活動は、あらゆる人が管理、運営しているお陰で楽しめていたということを改めて認識しました。

現在アブダビでは、不要不急の外出は自粛、夜8時以降朝6時までは例外を除き外出禁止です。毎晩夜7時半にスマートフォンの警報音がなり、外出を控えるよう警察から通知があります。日本で生まれ育ったためか、初めて警報がなった時には、北朝鮮のミサイルかもしくは地震かと思ってしまいました。お隣のドバイ首長国は24時間ロックダウン。外出の際には許可を得る必要があるそうです。私の勤務先も今週から2交代制になり事務所には週2、3回出勤しています。念のため、勤務先からは警察に呼び止められた際に提示できる書類を発給してもらいました。外出禁止や自主隔離の違反者が、これまでに相当数逮捕・罰金を科されており、SNSに外出の様子を投稿した外国人が、不要の外出だとして逮捕されたという報道も流れています。

商業施設は閉まっていますが、食料品店や薬局は空いています。マスクは義務化され、付けていない人には入口で赤十字スタッフがマスクを配り、エレベーターに乗る際に距離を空けるよう指導が入ります。レジでも皆一定の距離を空けるように気を付けています。政府が、輸入を含めた食料品の備蓄があることを呼び掛けており、食料品店でも物がなくなっている様子はありません。ただ日本食部門は物は品薄で、冷蔵品コーナーには豆腐で作ったうどん麺のようなものだけが、やたら並んでいました。この周辺に住んでいる他の日本人が買い占めた気配を感じるとともに、日本物品の輸入ルートが限定されていることが分かります。

自宅時間をいかに充実させるか。

テレワーク中の自宅デスク。

外出もままならないことから、家でできることを始めることにしました。まずは、お菓子作り。それから去年購入後、放置状態だった家庭用プリンターを設置しました。机の上にパソコンとスピーカーを、足もとにプリンターを。また、使う機会のなかったパレスチナのカップにコーヒーを淹れ、ルーマニアで買った陶器の箱に、手作りショートブレッドを入れ、サイドテーブルも引っ張り出して椅子の横に置きました。今は、ここが私のオフィスです。他にもオンラインで授業を受け、ラテン語など今後全く使用しない可能性が高い言語に加え、トルコ語、アラビア語、中国語も一気に学んでいます。

コペンハーゲン大学のオンライン講座。

現在の仕事内容や職場には満足しているものの、やはり人間関係や気遣いなど意識しないうちにストレスなどもあったのかもしれません。これまでは仕事から帰宅した後は、疲れていたせいかただ無為に過ごしていました。しかし、今は出勤の際には事務所でできる仕事に集中し、家で仕事をするにしても準備や移動の時間が節約できるので、これが「新型コロナウイルス蔓延下」の特別措置であることを除けば、この生活も悪くないと思っています。

心配なのは、飲食店や従業員、タクシーの運転手さんなどの収入。同国政府はさまざまな分野での経済支援を表明していますが、実際にだれにどのくらいの支援がなされるかの把握は難しい。政府の「要請」に応じないと逮捕されてしまう可能性が高いため、応じざるを得ないのですが、果たして長期間社会的活動が限定された生活を、全員が問題なく送れるのか。今後、現在講じられている規制もある程度の緩和が必要になるかもしれません。先行きが見通せない状況ですが、私はまずはオンライン講座を終わらせ、現在社会で使用されていないラテン語をマスターすることを第一目標に、しばしこの状況に身を預けたいと思っています。

※この内容は、2020年4月9日のものとなります。

Photos & Text: Kei Honda Editor: Mina Oba

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April 14, 2020 at 04:00PM
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